言語能力は各教科の文脈に沿ってすべての教科目で育まれなければならない

はじめに

 つい先日、高校の歴史教員が対象の研究会に参加してきました。そこで考えたことを、全2回のシリーズでまとめていきたいと思います。
 第1弾:言語能力は各教科の文脈に沿ってすべての教科目で育まれなければならない
 第2弾:社会科の筆記テストにおける「正しいもの」「適当なもの」とは?(仮)(近日公開)

第2弾を公開しました(9/4更新)。

pinkie-du.hatenablog.com

 その研究会では、3人程度のグループを組んで各自史資料(以下:資料)を持ち寄り、それを用いた問題を作るという活動が行われました。いわゆる「作問検討会」です。各自が資料を持ち寄り、どれを使って作問するかを決め、グループで問題をブラッシュアップし、そして完成して提出。最後に全体で発表し、質疑や意見等を交換するというのが大まかな流れでした。
 グループでの作問中、あるいは全体での発表会の中で幾度となく聞かれた言葉がありました。

“資料を読むだけの問題”だと国語の問題になるもんね。

 発する人によって含意はそれぞれだとは思いますし、(そもそもこの研究会の趣旨からも)多くの先生方が資料読解を要する問題を作る重要性を認識しているであろう一方、どういう位置づけでそれを作っていくかは慎重に考えていかないといけません。

「読解力の問題⇒社会科では扱わない」となってはいけない

 上の言葉に対してまず懸念するのは、

  1. 資料(特に文書や説明文などの文字資料)を読むことは国語科の範疇にあたることで社会科ではない。
  2. よって、そのような能力を測る試験を社会科で出す必要はない。

 という考えに至らないかということです。これに対しては、平成30年3月に出された『高等学校学習指導要領』、ならびに同年7月に出された『高等学校学習指導要領解説総則編』にこのように記されています(以下、下線部は筆者)。

 ○『高等学校学習指導要領』第1章総則 第2款教育課程の編成 2(1)
 各学校においては、生徒の発達の段階を考慮し、言語能力、情報活用能力(情報モラルを含む。)、問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力を育成していくことができるよう、各教科・科目等の特質を生かし、教科等横断的視点から教育課程の編成を図るものとする*1

 ○『高等学校学習指導要領解説総則編』第3章教育課程の編成及び実施 第2節教育課程の編成 2教科等横断的な視点に立った資質・能力 ア言語能力
 言葉は、生徒の学習活動を支える重要な役割を果たすものであり、全ての教科等における資質・能力の育成や学習の基盤となるものである。教科書や教師の説明、様々な資料等から新たな知識を得たり、……ことができるのも、言葉の役割に負うところが大きい。したがって、言語能力の向上は、生徒の学びの質の向上や資質・能力の育成の在り方に関わる重要な課題として受け止め、重視していくことが求められる。
 言語能力を育成するためには、第1章総則第3款1(2)や各教科等の内容の取扱いに当たっての配慮事項に示すとおり、すべての教科等においてそれぞれの特質に応じた言語活動の充実を図ることが必要であるが、特に言葉を直接の学習対象とする国語科の果たす役割が大きい。……言語能力を支える語彙の段階的な獲得も含め、発達の段階に応じた言語能力の育成が図られるよう、国語科を要としつつ教育課程全体を見渡した組織的・計画的な取組が求められる*2

 この2つに記されていることをまとめると、

  •  言語能力の育成は国語科を要としてすべての教科等で行わなければならない。
  •  各教科等では、それぞれの特質を生かした言語能力の育成を行わなければならない。

 といえるでしょう。

「社会科の特質を生かして育てるべき言語能力」とは?

 では、社会科の特質を生かして社会科で育成すべき言語能力とはどのようなものなのでしょうか。「歴史総合」の目標を例に考えてみます。

(1)近現代の歴史の変化に関わる諸事象について、世界とその中の日本を広く相互的な視野から捉え、現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を理解するとともに、諸資料から歴史に関する様々な情報を適切かつ効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする*3

 ここでいう「諸資料から歴史に関する様々な情報を効果的に調べまとめる技能」とは、『高等学校学習指導要領解説地理歴史編』において次のようなものと説明されています*4

  1. 課題の解決に向けて必要な社会的事象に関する情報を収集する技能。
  2. 収集した情報を社会的事象の歴史的な見方・考え方*5を働かせて読み取る技能。
  3. 読み取った情報を課題の解決に向けてまとめる技能。

 日ごろの授業では資料を収集することから指導していく必要がありますが、筆記テストでの資料の取扱いを考えると、2・3の技能の測定が深くかかわることになります。そうした技能を有しているかを測定できるテストを、我々社会科の教員は日々作成していかないといけないし、同時にそうした技能を身につけさせるための授業づくりを行っていかないといけません。

おわりに

 歴史学習において、そして歴史のテストにおいて資料を読むという活動は切っても切り離せません。その資料を読めるか否かを、単に読解力の有無と判断し、「読解力の育成は国語科だけに任せればいいんだ」「読解力を測るテストを社会科で問う必要はない」と開き直ってはいけないということを、ここで改めて述べたいと思います。そのために、これから社会科の教員が意識しないといけないと考えるポイントが、次の3点です。

  1. 歴史学習で「歴史資料を読む」という教科固有の学習活動を行っている以上、そこで求められる力を明確にして授業の中で育成し、それを確実に評価しないといけない。
  2. 社会科の「見方・考え方」を働かせて資料を読むことこそが、社会科固有の育成すべき「読解力」である。
  3. 社会科固有の育成すべき「読解力」を育むことを通して、すべての学習に通じる読解力の育成の一翼を担わなければいかない。

 じゃあどういう授業をつくればいいんだ、どういうテストを作らなければいけないんだ、そういう問いに対して答えられるようにならなければならない。それが私の今後の課題です。

*1:文部科学省『高等学校学習指導要領』2018年、p.5。

*2:文部科学省『高等学校学習指導要領解説総則編』2018年、pp.53-54。

*3:文部科学省『高等学校学習指導要領解説地理歴史編』2018年、p.123。

*4:同上。

*5:歴史的な見方・考え方とは、「時期、推移などの変化に着目して社会的事象を見出し比較して共通性や相違点などを明確にして事象相互の関連性に留意」する追究の視点や方法と考えられています。