【次期学習指導要領シリーズ②】「時代を通観する問い」に答えられる授業づくりを

次期学習指導要領での地理歴史科の科目の変化

 高等学校地理歴史科の次期学習指導要領(以下:「指導要領」)やその解説(以下:「解説」)は、従来のそれらから、量的にも質的にも劇的な変化を遂げています。具体的にいくつか挙げてみると、

  1. 従来の世界史A・日本史Aに代わり、新科目「歴史総合」が必修科目として登場。
  2. 従来の地理Aに代わり、新科目「地理総合」が必修科目として登場*1
  3. 従来の世界史B・日本史B・地理Bはそれぞれ、「世界史探究」「日本史探究」「地理探究」となる。

 つまり、すべての科目構成と、どの科目が必修科目かが変わることになります。ここで注意しなければならないのは、従来のA科目がそのまま「総合」科目になり、従来のB科目がそのまま「探究」科目になったのではないということです。「歴史総合」「日本史探究」ともに従来の科目とコンセプトを大きく異にしています。しかしその中には、「A/B科目」であるか「総合/探究科目」であるかに関係なく日々の授業を考える上で重要となる考え方も含まれています。その一つを、「日本史探究」の中で挙げられている概念を手がかりにまとめてみようと思います。

 なぜ「指導要領」「解説」は分厚いのか

 その前提として、「指導要領」が現行のそれに比べてどのように変化したのか、改めて確認しておきます。ひとつ前の記事でも述べていますが、「指導要領」や「解説」は、現行のそれらと比べて圧倒的に分量が多くなりました。

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 その要因として、大きく以下の3つが挙げられます。

  1.  各教科・科目の目標が、学校教育法で規定される「学力の三要素」に合わせる形で詳細に記述されるようになり、「何ができるようになるか」が明確になったこと。
  2. これまでの学習指導要領では「何を学ぶか」に関する規定に留まっていた記述が、「指導要領」では目標の達成のための学習活動の展開が詳細に書き込まれたこと。
  3. その記述に加え、さらに「解説」では各学習活動の中で想定される探究テーマや、教員の主発問なども詳述されたこと。

 要するに「指導要領」「解説」では、これまで教員のさじ加減による部分まで教室での学びの様子が相当に詳しく、かつ構造的に述べられているといえます。そして、「指導要領」が法的拘束力を有するものである以上、われわれ教員はその流れに依拠した授業づくりをしていかねばなりません。

 日本史探究における「時代を通観する問い」

 では、新科目「日本史探究」ではどのような過程で学習を進めていくことが想定されているのでしょうか。簡単にまとめると下の3手順となります。

  1. 問いを立てる
  2. 問いに対する仮説を見出す
  3. 問いと仮説をふまえ、その時代がどのような時代だったのかを理解し表現する

 この過程の中で立てられる問いを、「指導要領」では「時代を通観する問い」と呼んでいます。「時代を通観する問い」の定義は「解説」にあるのですが*2、簡単に言うとこの学習過程からもわかるように、「古代/中世/近世/近現代とはどのような時代か」という問いであると言えるでしょう。上記の過程で学習が進むならば、その問いは学習者たる生徒自身が立てなければいけないものであり、学習者が問いを立てる力をどう養うかは今後考えていかねばならないでしょう。また、多くの地歴科教員にとって、日々の授業を探究型にシフトすることがすぐにできないことであるというのもまた事実だと思います。しかし、「時代を通観する問い」とそれに対応する答えは、教員自身が日々念頭に置きながら実践をしなければいけないものであると強く言いたい

まとめ―なぜ日本史で知識を身につけるのか―

 日本史の学習で、学習者も教員も多くの知識に触れることになります。その知識の量・細かさが果たして適切なのかについては賛否あるということは一旦置いても、その知識を得ること自体が目的であるのではないということは、間違いないでしょう。個々の政治的事件や社会の営み、経済の動向、文化財の特徴を整理したうえで、それらをもとにして多面的に、時代の特色を考察することこそが日本史学習の目的です*3。つまり、個々の事実的知識は、「それがみられる時代は○○な特徴をもつ時代である」という理解につながるものでなければなりません

 そうした理解を生徒に獲得させるためには、まず教員自身がその理解をもっていなければなりません。言いかえると、「時代を通観する問い」に教員自身が答えられなければならないのだと言えます。

 「時代を通観する問い」に基づく学習を行わねばならなくなるのは、「指導要領」が施行される2022年度以降のこと。しかし「時代を通観する問い」を教員自身がもつこと、そしてそれを学習者に考えさせることは、明日の授業からでも始めなければいけないことだと考えています。

*1:普通科高校で地理が必修となっていたのは、昭和35年告示の学習指導要領が最後でした。つまり今回の地理系科目の必修化は、約60年ぶりのことになります(詳しくは、https://www.nier.go.jp/guideline/s35h/chap1-2.htm

*2:「解説」p. 193に、「時代を通観する問い」を「前の時代からの変化と新たな時代に成立した社会との関係や、その変化が時代を通じて定着していく理由や条件などを考察するために、生徒自身が設定する『問い』である」と定義されている。

*3:現行学習指導要領解説の「科目の性格」にも、「我が国の歴史の展開について、政治や経済、社会、文化、国際環境など各時代の特色及びその変遷にかかわる総合的な考察や、それに基づく歴史的思考力の育成が重要である。この点に、高等学校段階の日本史学習としての『日本史B』の特性があるといえる」と書いてあります。